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Text File  |  1994-11-16  |  2KB  |  34 lines

  1. 420/420   WST00364  和田 光平         まかぬ種ははえぬ(上方)
  2. ( 8)   94/01/20 09:52
  3.  
  4.   まかぬ種ははえぬ(上方)
  5.  
  6.  おとぎ話,かちかち山の冒頭,おじいさんは,山の畑に出かけ種を蒔きます. 
  7. 「一粒は十粒になーれ」「一粒は百粒になーれ」「一粒は千粒になーれ」
  8.   それを見ていた,狸が,「一粒は一粒のままさ,晩げになったら,おいらが食べて
  9. 全部無くなるのさ」と悪態をつきます.
  10.   種から収穫できる籾の数は,中世ヨーロッパでは蒔いた種の数倍だった言います. 
  11. 今日では, 想像も出来ないくらい効率が悪かったようです. 
  12.   有名な聖書の言葉に「一粒の麦, もし死なずば....」がありますが, どんなに効率が
  13. 悪くても種を蒔かないことには, 収穫は期待出来ません. 岩波書店のマークになってい
  14. る「種を蒔く人」は先駆者, 開拓者のイメージに相応しいものです.
  15.   商談開拓,新規発掘,計画は何時も勇ましいのですが,実際に耕し,種を蒔く実行の
  16. 人は少ないようです.反面,華やかな収穫の瞬間が大衆には目立ちます.その陰に地道
  17. な開拓者がいたことを,忘れてはなりません.それを教えてくれているコトワザです.
  18.  
  19.  おじいさんの苦労をあざけるように, 収穫も待たず, 肝心な種を掘り返して食べて
  20. しまう狸は許せない存在です. とっつかまえて, 縛り上げ, 軒先に吊るしたまでは
  21. 良かったが, 狸もしぶとい. おじいさんが山へ出かけたスキをついて, お婆さんを欺き
  22. 殺害する. その遺体の皮をはぎ, 肉を料理して, ばばあ汁を作り, はいだ婆さんの皮を
  23. 被っておじいさんを迎える分けです. 狸汁だと騙されて, 汁を食べたおじいさんに狸が
  24. 残す捨て台詞は, 物凄い. 「ばばあ食ったじじいめ, なげしの下の骨を見ろ」
  25.   この物語の背景に, 猛烈な飢饉があって, 人間を食べてしまったじいさんが実在した
  26. 匂いがします. それを偽って狸汁だと言ったのは, そもそも, おじいさんでは無かった
  27. か? そんな気がしてりません.それにしても,実に凄惨な冒頭の場面でした.
  28.   話は横道にそれますが, 狸と呼ばれる動物は, 狸とむじなに分かれ, 狸は犬に近く
  29. むじなはカワウソに近い動物なんだそうです. そして狸汁にして食べた人によると, 狸
  30. の方は油が多く, 肉は臭みがあって固く, とても食べられたものでは無い. 一方むじな
  31. 汁は案外美味しいそうです. それで昔の人が食べたという狸汁は, 正しくはむじな汁で
  32. あろうとのことでした. 
  33.                            東海支社)和田 光平
  34.